風土記に載っている神話を再構築して、一本の物語にまとめました。単なる現代語訳ではなく、時系列に並び替えて神さまを名寄せして、ラノベ風に味付けしています。

風土記とは

風土記ふどきとは、奈良時代に日本全国でまとめられた地誌です。土地の植生や農作地の評価のほか、地名の由来を語る神話や偉人伝を中心に記されています。
時の天皇直々の命令に従って、律令政府に提出された公的な報告書。なんて聞くと、おカタイ書物のような気がしますよね。ところが、とっても素朴で、当時の生き生きとした空気に触れられるような本なんです!
神話に仮託される形で、昔の人たちにとっての“当たり前”や、おらが村が一番と言いたげなお国自慢、もはやオヤジギャグとしか思えない土地の命名などなど。国だとか天皇だとかっていう雲の上の存在じゃなく、私たちと同じ庶民感覚にあふれています。
また、浦島太郎や天女の羽衣など、みなさんもよくご存知のおとぎ話の中には、風土記に元ネタが載っているものもあります。他にも、どう考えてもマンガとしか思えない、笑い話が盛りだくさん。
奈良時代のすがたを浮き彫りにするだけでなく、日本神話ファンにとっても、古事記や日本書紀とは違う神話や伝承に出会えるのが、風土記です。

時を超える地名

1300年以上前の書物ですが、記された地名の一部は、なんと!現在も残っています。ひとつ例を挙げましょう。兵庫県の姫路市飾磨区にある英賀あがの由来として、『英賀の里。伊和大神いわのおおかみの子アガヒコとアガヒメが、ここに鎮座している。それで、神の名前にちなんで里の名とした』とあります。当てている漢字こそ変わっていることがありますが、長い年月を超えて、今に伝わっている地名があるんです!(これを遺称地といいます)

ただ、例にあるように、ほとんどの説話がたった数行しかありません。続きがあるわけじゃないし、あっても『続きはこちらです』なんて明記もされていません。話の流れとか、登場人物が同じだし、アッチとコッチの物語はつながっているのかな?って、ふわっと感じることだけはあって。あくまで地名の発祥を述べているだけなので、物語の順番どおりに並んでいないのは、当然なんですけどね(私はそこも含めて、風土記の魅力だと思っています)。

いまどき風土記とは

風土記のコマ切れになっている話を並び替えて、行間を埋めていったら、一本のストーリーになるんじゃない? この思いつきを形にしたのが、当サイトいまどき風土記です。諸説ある神さまは名寄せして、エピソードをまとめています。
なので、時系列や話と話のつながりに、学術的な裏付けは一切ありません。また、読みやすさを優先して、難しい漢字の並ぶ『国・郡・里(郷)』の地名は極力省き、文体もラノベ風にしています。

ご了承いただきたいことがちょっと多いですが、奈良時代よりもさらに昔から言い伝えられてきた、飾りけのない物語の魅力を、ほんの少しでも伝えられれば、とてもありがたく、幸せに思います。

2018年5月30日 風土記編纂の詔勅から新暦で1305周年の日に – 春比等

追伸
現在完成しているのは神代かみよと設定した、出雲や播磨の神話が中心です。天皇行幸話などは鋭意作成中! 常陸や肥前、豊後などの内容は、今しばらくお待ちください。
動植物や土壌評価についても、いずれまとめたいと思っています。