出雲の国造り
手染・玖潭・飯梨・屋代・屋裏
オオクニヌシは何も、美女集めにばかりうつつを抜かしていたわけではない。一方で国造りにも勤しんでいた。
「ここはとても丁寧に造った土地なのさ」
彼が胸を張ったのが、手染の郷だ。
オオクニヌシは地上で産まれた神だが、高天原の神に米をお供えしていた。ある時、収穫した米を保管する倉が足りなくなったので、木材を探しに出かけた。ところが楯縫の郡に着いたとき、にわか雨が降ってきた。
「あ~あ、ツイてないねぇ。おまけに、周りは長雨にやられた質の悪い木ばっかり。クソッ、腐れ山め」
彼がそう毒づいたせいで、玖潭の郷と名付けられてしまった。
高天原にささげものをしてきた彼は、天から降り出雲に戻ったときに、飯梨の郷に着いて、御飯を食べた。
オオクニヌシは弓矢の練習にも励んだ。出雲に従わない悪い神を相手にするときには、武器を取って戦うことも必要になる。
屋代の郷では、土を盛ってそこに的を立て掛けて、弓を射た。屋裏の郷でも、矢を射立てた。
宍道・三処・御崎山・神原
宍道の郷には、彼が狩りに出かけて追いかけたイノシシの像が、南の山に二つある。イノシシを追う犬の像もある。
国内を巡って土地を褒めるのも、王の大事な務めだ。
仁多の郡では、オオクニヌシはこう言った。
「この国は大きくもなく小さくもなくて、丁度良いね。川の上流は小枝がたくさん交わるほど茂っているし、下流は芦が地面一杯に這っている。ここは潤った小さな国だね」
三処の郷では、こうも言った。
「この土地は田んぼが良いね。私の領地にしよう」
また、御崎山の西の麓には、彼の別荘があった。
神原の郷には、神宝を積んで置いた。