アメノヒボコの侵略
八千軍・粒丘
オオクニヌシの苦難は続く。初めての失恋の後に待っていたのは、外敵の襲来だ。
すると、水平線の彼方から黒い塊が近づいてくるのが、彼の瞳に映った。船だ。それも一
「なっ……! スゴい数だぞ、あれ。もしかしなくても軍船……攻めてきたんだ!」
沖まで押し寄せた集団の中で、ひと際豪華な装飾が施された先頭の船。その船首に立つ男が叫んだ。
「我が名はアメノヒボコ! はるばる
アメノヒボコと名乗る神の後ろには、八千人の軍兵が控えていた。
(いきなり押しかけてきた上に、エラそうな態度。なんて無礼なヤツだ)
ピンチに変わりないが、オオクニヌシはムッとした。
「ああ、私がこの国の王、オオクニヌシ。私は寛大ですからね、宿泊を許してあげましょう……ただし、海の中にね!」
「フン……そうかい。なら、ありがたく宿を頂戴するぜ」
アメノヒボコは不敵に口の端をゆがめると、手に持った剣を海水に挿し入れた。そしてコオロコオロとかき回していく。すると、みるみる小さな島ができ上がったではないか。
(うわ、こいつ、とんでもなく強い神力を持っているぞ。マズいな……まだ占有できてない土地が残っている。先回りして私のものにしなくては、取られてしまう)
外来神の強大な行為を恐れたオオクニヌシは、急いで
また、彼が
これらはすべて、国占めの儀式。オオクニヌシの顔には焦りの表情が浮かんでいた。
手苅丘・川音村
一方アメノヒボコは、早くも
アメノヒボコはさらに攻め入る。この日は
「川の音が実に高いではないか」
と褒めたたえた。ここを自分の地にしたと宣言したようなものだ。
奪谷・高家
「くっ、せっかく造った国が、これじゃあまた荒れてしまう」
心やさしいオオクニヌシの胸の内に、戦いに対する迷いが生じたのかも知れない。
その後、
「この村の高さは、他の村より勝っているぞ。良き土地を手に入れた」
韓の国の神は、着々と播磨を切り取っていく。
伊奈加川・波加村・粳岡
オオクニヌシとアメノヒボコが再び激突したのが、
「あの鳴き声……まるで私たちの戦いをあおっているみたいじゃないか」
「いいや違うな。オレ様の軍を鼓舞しているのさ。そうら、一気にかかれぇっ!」
「たとえそうだとしても、私は負けるわけにいかない。みんな、押し返すんだ!」
ある時、
「よし、ここは私が占めたぞ」
「ハッハッハ、遅かったなオオクニヌシ」
そこへ嘲笑う声。アメノヒボコのほうが先に到着していたのだ。
「くそっ。なんの対策も図らなかったから、あっちが先に着いてしまったんだ」
彼がそうこぼしたので、その村は
オオクニヌシとアメノヒボコは、
それで勢いづいたオオクニヌシは、アメノヒボコの勢力を少し押し戻すことができた。