播磨の御子神たち
ヒメ・ヒコ
衣服を縫う仕事をする氏族の祖先が、
イワタツヒメ
オオクニヌシの子イワタツヒメは、常に屈んで歩いていた。南の海から北の海へと抜け、東から巡っていったときに、
「他の土地はぬかるんでたから、足を滑らせそうで怖かった。そのせいでずっと中腰だったけど、ここなら背を伸ばして歩けるわ。うぅ~ん、いい所だなぁ」
彼女の踏んだ足跡は多くの沼となった。巨神だったのだ。
イワタツヒメが、
「この弓を射て、矢の届いた所が良い所!」
こう宣言して放たれた矢は
イワタツヒコとイワタツヒメが、
イワタツヒコもまた巨神。その大きな足で、山の峰を踏み潰した。
「これで地形が変わって、俺の村のほうに流せるぞ」
「なんてことを。元はといえば、私の村の泉から流れ出てるものよ。それを自分の所に流そうだなんて、道理に反するわ」
「へへん、関係ないね。川の向きはもう変わったんだ」
「だったら、またそれを変えるまでよ」
イワタツヒメは巨大な
「やりやがったな! そういうつもりなら、お前の村の近くから奪ってやる。これで水が西側の
イワタツヒコの所業に、イワタツヒメはついにキレた。
「許さない……絶対にあんたに水は渡さないんだから!」
彼女は地下を通すための下どいを作り、泉の村の田の近くから流し出すようにした。こうして川の水が絶えたので、水のない川、美奈志川となった。