播磨に来たスクナビコナ

稲種山

ところで、スクナビコナという体の小さな小さな神がいた。オオクニヌシの肩にちょこんと乗るくらいだ。ひょんなことから彼の国造りを手伝うことになり、播磨はりまの国までやって来た。

「おっす! 久しぶり~」

「やあ、相変わらずテンション高いですね。ここでもまた、よろしくお願いします」

「任しとけッ!」

そんなこんなで、埴岡はにおかの里に向かったオオクニヌシスクナビコナ生野いくのの山の峰から眺めると、林田はやしだの里まで見渡せる。

「おお~、遠くまで見える。土地の形もよくわかりますね」

「そうだな~」

「ん~……そうだ。あの山には、稲種を置いたらどうでしょう? そうしたらきっと実りが豊かになりますよ」

「なるほど!」

「山の形も稲を積み上げた感じに似ていますね」

「だな!」

何はともあれ、稲種を送ってその山に積んだ。それで稲種山いなだねやまと呼ばれるようになった。

埴岡

オオクニヌシの発想はその後もさえ渡っていた。スクナビコナにこんな競争を持ちかけたのだ。

「ねぇ、スクナビコナさん。ただ歩いていくのも退屈ですから、ちょっとした勝負をしませんか?」

「良いね~」

「おっ、乗り気ですね。じゃあ遠くまで行くのに、粘土を背負って行くのと、ウ〇チをしないで行くのと、どっちができるか。私はウン〇をしないで行きますよ」

「オレははにを持って行くぞ~」

こうして、くそを我慢するオオクニヌシと、重たい埴を背負うスクナビコナの、バカバカしい競い合いが始まった。最初こそ平気な顔をしていた二柱だったが、何日か過ぎると汗をダラダラと流しながら歩くようになった。オオクニヌシの額に浮かぶのはあぶら汗だ。さらに数日が経って。

「私、もう、我慢できない……ッ!」

そう叫ぶやいなや、オオクニヌシはすぐさま座り込んで糞をした。

「だな~、すんげ~苦しい」

と笑って、スクナビコナも埴を投げ捨てた。
また、オオクニヌシが糞をしたときに、小さな竹がその糞を弾き上げて、服に当たった。

「げっ、汚れたし……」

この時の埴と糞が石となって固まり、今もなくならないで残っている。それが神前かむさきこおり埴岡はにおかだ。