スサノオの国造り

佐世・御室山

イザナギから産まれた神の中でも特に貴い三柱が、アマテラスツクヨミスサノオアマテラス高天原たかまのはらを、ツクヨミは夜の世界を治めていた。
スサノオはというと、最初は海原を治める予定だったが、すったもんだの末に地上に降りて、出雲いずもの国に住んでいた。しかも、クシナダヒメという可愛らしい女神と結婚までしていた。

ある時、スサノオは国内を見て回ろうと思い立った。

「俺はこの国が気に入ってるんだ。人々が元気にやっているか、様子を見なくちゃな」

佐世させさとに着いた彼は、村人たちを集めて宴会を開いた。宴もたけなわ、よほど機嫌が良かったようで、サセの木の葉を髪に挿すと、すっくと立ち上がった。

「よ~し、いっちょ俺も踊ってやるか」

酔っ払いテンション丸出しで少々面倒くさい状態だったが、村人の奏でる音楽に乗って、当人は楽しそうに舞い踊った。周りもやんやの喝采を贈る。
すると、髪飾りにしていたその葉がはらりと地面に落ちた。それを気にするでもなく、スサノオは踊り続け、夜が更けていった。

「うお~、楽しかった。いい村じゃねぇか。しっかし、そろそろ眠りてぇな。そうだな……あの山がいい。あそこに、俺が泊まるための御室みむろを造ってくれよ」

スサノオは近くの山を指差しながら、宴会の片付けをしていた村の人々に命令した。人使いが荒いが、スサノオの強さは誰もが知っていた。慌てて村人たちは麓の洞穴の中にワラを敷き詰め、簡易的な寝床を用意した。そんなわけで、その山を御室山みむろやまと呼ぶようになった。

須佐・朝酌

翌朝、山を出発したスサノオは、須佐すさの郷まで進んだ。

「ここは小せぇ土地だが住むには良さそうだ。だから俺の名前をここのどこかに付けたいが、木とか石っころみたいなつまらねーものには付けねーぞ」

少し考え込んだ彼は、自分の分身ともいえる御魂みたまをこの地に留めることにした。強い力を持つ神は、自分であって自分ではないエネルギーを、体から分けることができるのだ。本体から分かれた御魂は、別の神格を持つ。

「よう、俺。ここは任せたぞ」

「ああ、俺。バッチリ守ってやるぜ」

それからスサノオ大須佐田おおすさだ小須佐田おすさだという、神にささげるための作物を育てる田を、この土地に定めた。自分の名を、自分のための田んぼに付けたのだ。

さらに国巡りを続けた彼は、朝酌あさくみの郷を、神にお供えする朝夕の食事のための、食料を献上する集団くみの住む所と決めた。