出雲・常陸・土左・豊前・摂津の神々

出雲の神々

日本には八百万やおよろずといわれるほどたくさんの神々がいる。ここからは、そのごく一部を国別に紹介しよう。

イザナギの子ヒノハヤヒは、斐伊さとに住んでいた。
ワナサヒコは、船岡山ふなおかやままで船を引いてきて据えた。

ウノヂヒコは、何があったか知らないが、親のスガネを恨んでいた。彼は神力で出雲いずも北方の海の潮を押し流し、スガネを漂流させることに成功した。
その時海の水が、海潮うしおの郷にまで至った。
ウノヂヒコはまたとある村で、こんなことを言った。

湿地にたの水で乾飯を柔らかくにたにして食べよう」

だから本来はニタの郷というべきなのだが、その村は沼田ぬたの郷と呼ばれている。

サメがある時、阿伊あいの村にいるタマヨリヒメに恋をした。サメはなんと川をさかのぼり、恋山したいやままで上っていった。
それを伝え聞いたタマヨリヒメは慌てた。

「キモ~い! サメのくせに、なにワタシに会いに来ようとしてんの!?」

彼女は急いで川を石で塞いだ。
そのため、サメはタマヨリヒメに会うことができず、彼女を慕うばかりだった。

他にも、タマツクリは玉峰山たまみねやまの峰に、キジマツミは来嶋きじまの郷に、ハタツミは波多はたの郷に高天原たかまのはらから降臨し、ウヤツベは宇夜うやの里の山に降臨し、それぞれ住んでいた。

常陸の神々

筑波山つくばさんに住んでいるイイナのお社が、稲敷いなしきの郷の西にあった。
名前の知らない巨神が、大櫛おおくしの岡にいた。体格は、非常識に背が高く、体は丘の上に座っていながら、手で浜辺の大ハマグリをほじくるほど。その食べた貝の殻は、積もり積もって丘になった。

土左の神々

イワトワケの子アマツハハは、朝倉あさくらさとに住んでいた。

豊前の神々

新羅しらぎの国の神・カハルが、はるばる海を渡って鹿春かはるさとにやって来て、その川原に住んだ。

摂津の神々

アマツワニが、ワシに化けて下樋したびの山に居着いていた。ここを十人が通行したら、五人は通り五人は捕まったという、恐ろしい交通妨害の神だった。
ある時、クワオという者がいた。彼はこの山に向かって、下樋という暗渠あんきょを使ってアマツワニの元に行き、これ以上荒らされることがないよう、その神をまつった。